玄奘三蔵求法の足跡

峠越え

峠越え

ここで,上記 1. に述べたベグラムからドシへ行くためにヒンドゥクシュ山脈を越えるルートに関して,想像を膨らませてみたい。
「玄奘三蔵,西域・インド紀行,長澤和俊 訳,発行所 株式会社講談社,2001,5,21 第6刷」においては,具体的なルートを特定できないが,このことが玄奘三蔵の踏破したルートを想像する意欲をかき立てる。Google Earth (アフガニスタン地域の地図はその精度が高くないが)と一部サラン峠越えに関する自分の体験をもとに,次の3ルートを候補に挙げた。
(1) 現在のサラントンネルの上部を越えるルート
(2) サラントンネルの手前にあるQalatak Bridge 付近を右折して,Binao, Aluchaham, 標高約3,700m の峠,Chaharmaghzzah, Pol e Bajga Khenjan を経てドシ(Doshi)へ至るルート
(3) サラントンネルへの起点であるJabal-os-Sarajより右折し,北東へ向かって,Tawakh, Rokhah, Barak, Pukh, Wakhi と登って行き,Kure Mirzabeg にて左折し,Khavak 峠(標高3,655m) を越え,Qala Ahingaran, Deh-e Salas, Layn, Pol e Bajga Khenjanを経てドシへ至るルート
(1) のルートに関しては,降雪のある時期に馬,騾馬に荷物を負わせて越えるのは無理なように思う。頂の鞍部にて標高は3,800m 程である。(実際,サラントンネル上の頂きにおいて鉄塔工事が出来るのは,7, 8, 9 の3カ月であった。)(現在の道路を示す青のライン)
(2) のルートも選択肢の一つとしたが,Google Earth で観察する限り,サラントンネル上部より厳しい山容である。(緑のライン)
(3) のルートは,Jabal-os-Saraj (標高1,600m) より,なだらかな渓谷をだらだらと登り,ドシへ向かって左折するKure Mirzabeg においても標高は2,600m である。そこから,Khavak 峠(標高約3,700) まで登るが,このルートは(1), (2) のルートと比較して,全行程においてなだらかな地形であり,越えるべき急峻な頂は見当たらない。(赤紫のライン)
以上の3ルートの内,玄奘三蔵の通ったルートは(3) の可能性が高いと想像する。
上記3ルートの概略を下図に示す。
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